事例 02 / 神奈川県横浜市・1棟RCマンション

築35年のRCを、次の30年に残す

フルスケルトン+設備総入替+共用部大規模修繕+オートロック新設を一括実施。
坪単価 相場6,000円のエリアで 9,600円(約1.6倍) で着地、募集開始から 2.5ヶ月で満室

Results at a glance

結果サマリ

Key metrics
エリア相場の坪単価(賃料)
約 6,000円/坪・月
本物件の募集坪単価
約 9,600円/坪・月(相場比 約 1.6倍)
募集開始から満室まで
2.5ヶ月全 12戸を順次成約
戸あたり工事費(専有部)
約 600万円築35年・2LDK のフルスケルトン化費用目安
工事費総額
約 1億円規模専有部+共用部 を含む総工事費
関与範囲
仲介・管理NOCOS:プロジェクト主管/施工:専門リノベ会社
Project profile

物件・プロジェクト概要

所在地神奈川県横浜市(都心直結・私鉄沿線の主要駅エリア)
構造・規模RC造4階建、全 12戸
竣工1987年
間取り2LDK(専有面積 約 56㎡)
プロジェクト範囲全 12戸を一括でフルスケルトン化+設備総入替/共用部大規模修繕/オートロック新設
リノベーション完了2022年 3月
関与範囲NOCOS:仲介・管理/専門リノベーション会社:施工

※ 個別の権利関係に配慮し、所在地は市レベルまでの表記としています。

Background

築35年で問われた
残すか、手放すか

1987年竣工、全 12戸のRCマンション。築35年というタイミングは、「修繕でしのぐか、構造ごと作り直して次の30年に残すか」の分岐点でした。

このプロジェクトでオーナーが選んだのは、部分修繕でも段階リノベでもなく、全 12戸を同時にフルスケルトンへ戻し、設備一式を総入替、共用部の大規模修繕とオートロック新設までを一気通貫で行う——という最も重い投資判断でした。

家賃のリセットを一度で済ませ、競争力を一段引き上げ、向こう30年を残す。NOCOSは、プロジェクト設計・施工会社とのやり取り・募集・入居後対応まで、一連の主管を担いました。

物件を残す、家賃を残す、入居者を残す——このプロジェクトの軸は最初から最後まで その一点 でした。
01 — Investment

「次の30年を残す」前提で、
足し算ではなく総入替を選ぶ

築35年のRCで、最も難しいのは「どこまでやるか」の線引きです。表層リフォームの足し算でしのぐ選択肢もありました。が、このプロジェクトでは次の前提から逆算しています:

この規模で一括投入する最大の理由は、「足し算で延命したコスト」と「総入替で再起動したコスト」を10年後に比べると、後者の方が安く済むことが多いからです。家賃下落の地すべりは、設備・共用部・印象の 3つが同時に古びることで加速します。だから 3つ同時にリセットする。

02 — Design

「10年揉めない条件」を、
契約と図面に残す

共用部から専有部まで全面更新するからこそ、設計段階で 運用フェーズの揉めごとを先回りで潰す ことに時間を使いました。

共用部:オートロック新設の運用設計

オートロック新設は、機器選定だけではなく、運用ルール(鍵の世帯枚数・紛失時の再発行フロー・宅配ボックスとの連動)を入居開始前に決め、契約書類と入居案内に組み込みました。

後付け設備でいちばん揉めるのは、機械そのものではなく 運用ルールの不在 です。

専有部:「制約を契約に書き、工事完了後に撤廃する」

リノベーション本体のスケジュールに、分電盤の増設工事が間に合わない局面がありました。NOCOSの選んだ対応は、「制約を入居者に明記したうえで、後日撤廃する」というものです。

専有部:エアコン配管カバーの代替品判定

当初仕様が施工業者の調達ラインで止まったため、代替品への切替を提案・オーナー承認のうえで進行。最初に契約開始する号室の引渡日から逆算 してスケジュールを組み直しました。

専有部:室外機の放熱クリアランス

壁掛け室外機の上部に約 10cm の空間を確保。後年の故障率を下げる設計判断で、これも事前にオーナーへ説明・合意のうえ仕様化しています。

派手ではありません。しかし、こうした「初期に決めておけば10年揉めない」判断こそが、家賃と入居者を長く残します。

03 — Leasing

相場の1.6倍を「貼る」ための、
地に足の戦略

このプロジェクトでいちばん神経を使ったのは、家賃設定でした。

築35年の物件で相場の1.6倍を貼るのは、通常の感覚では「絶対に決まらない家賃」です。それを 2.5ヶ月で満室に持ち込めた理由は、3つの構造に分解できます。

理由 1:立地プレミアムを最大限に「読み替える」

都心ターミナル駅まで 30分圏・私鉄沿線の主要駅という立地は、「築古でも便利」ではなく 「便利だから築古でも選ばれる」 と読み替えられる条件が揃っていました。フルスケルトン+設備総入替+オートロック新設で、内装と設備の古さという減点要素を消すと、立地の加点だけが残ります。

理由 2:コロナ禍の追い風を逃さなかった

募集は 2022年初頭。在宅勤務の定着で、郊外型・広めの間取り(2LDK・約 56㎡)への需要が一時的に強く伸びていた局面でした。築古RCにとって追い風が吹く稀な時期で、ここを取りに行く判断を早くしました。

理由 3:12戸という戸数を「営業のテコ」に使う

1戸だけのリノベ物件は、仲介会社にとっては「ついで紹介」になります。が、12戸まとめてリブランドした物件は、仲介会社にとって 「お客様を連れて行く意味のある物件」 になります。

特に都心ターミナル駅エリアの賃貸仲介会社に対しては、NOCOSから継続的にリーシング活動を行い、「ここに連れて行けば決まる」「連れて行けば次の物件の優先紹介が回ってくる」 という関係を意図的に構築しました。1.6倍家賃を成立させたのは家賃広告ではなく、この 「仲介会社が動く理由を設計したこと」 です。

残 1戸の処理

それでも、需要層の最初の波が一段落した最後の 1戸はやや滞留しました。ここに限定して AD(広告料)を 2ヶ月に引き上げ、ピンポイントで早期消化。結果、募集開始から 2.5ヶ月で全 12戸満室 で着地しています。

満室を残すのは家賃の総下げではなく、どこに、どれだけ、いつ薬を効かせるか の構造判断です。
04 — Post-occupancy

半年間の対応を、記録に残す

引き渡しはゴールではありません。入居から数ヶ月、軽微な不具合は必ず出ます。NOCOSがオーナーの代わりに動いた例:

ひとつひとつは小さい工事です。けれど、「言えばすぐ動く管理会社がついている」というシグナルを入居者の体感に残すこと が、退去抑止の本体です。家賃でも内装でもなく、対応の速度と記録が、次の更新と次の入居者を連れてきます。

Takeaways

このプロジェクトから残したい構造論

  1. 築35年は「修繕の延長」ではなく「次の30年に残すための初期投資」として設計する。
  2. 専有部・共用部・セキュリティ(オートロック等)の 3つは、同じタイミングでリセットする。 古びるのが同時だから、入れ替えも同時にやる方が長期では安い。
  3. 戸あたり投資額は、家賃からの逆算ではなく、競合との相対比較で決める。 このプロジェクトでは戸あたり約 600万円、共用部を含めた総工事費は約 1億円規模。
  4. 仲介会社が動く理由を、家賃広告の前に設計する。 12戸まとめてリブランドして「連れて行けば決まる物件」を作る、特定エリアの仲介会社と継続的な関係を結ぶ——家賃広告は最後の薬で、本体は関係設計。
  5. 全戸同時リリースで家賃をリブランドする。 段階リリースは新旧家賃が並列で残り、上方修正が効きにくい。
  6. 募集は均一に下げない。最後の 1〜2戸にだけ薬を効かせる。
  7. 引き渡しは終点ではなく、半年間の伴走の起点。 対応の記録が、入居者を残し、家賃を残します。
NOCOSが提供しているのは、家賃査定でも管理代行でもなく、「残す」ための一連の構造判断 です。
FAQ

この事例についてのよくある質問

築35年のRCマンションを一棟再生する戸あたり工事費はいくらか?
本事例(横浜市・1987年竣工RCマンション全12戸)では、専有部のフルスケルトン化+設備総入替で 戸あたり約 600万円。共用部大規模修繕とオートロック新設を加えた 総工事費は約 1億円規模 でした。投資額は「家賃から逆算した上限」ではなく、競合(築浅・新築含む)と並べて選ばれるラインから決定しています。
築古RCのフルリノベ後、エリア相場を上回る家賃を貼れる条件は?
本事例で坪単価 相場 6,000円→9,600円(約 1.6倍)を成立させた条件は 4つあります。①立地プレミアム(都心ターミナル駅まで 30分圏)、②設備・共用部・セキュリティの 3つを同時にリセット③全戸同時リリースで家賃をリブランド④特定エリアの仲介会社との関係設計。家賃広告は最後の薬で、本体は関係設計です。
12戸を一括でリノベする利点は?段階的リノベとの違いは?
段階リノベでは新旧家賃が市場に並列で残り、家賃の上方修正が効きにくくなります。全戸同時リブランド なら、市場が「リブランド後の物件」として家賃を再評価しやすく、相場を上回る家賃が成立しやすい。さらに仲介会社にとっても「ついで紹介」ではなく 「お客様を連れて行く意味のある物件」 として営業のテコになります。
築古物件にオートロックを後付けする際の運用設計のポイントは?
機器選定よりも 運用ルールの設計 が重要です。本事例では、鍵の世帯発行枚数・紛失時の再発行フロー・宅配ボックスとの連動ルールを入居開始前に確定し、賃貸借契約書類と入居案内に明記しました。後付け設備で最も揉めるのは機械そのものではなく、運用ルールの不在です。
リノベ工期に間に合わない設備工事がある場合、入居者にどう説明したか?
本事例では分電盤の増設工事が一括施工タイミングに間に合わず、入居開始時の賃貸借契約に電気アンペア数の上限 40A を設ける特約を明記 しました。その後、分電盤工事の完了に合わせて各入居者と個別に再調整し、上限特約を撤廃。「先に書き、後で外す」一往復を回すことが、入居者との関係を長く残します。
募集開始から満室まで何ヶ月かかったか?
募集開始(2022年 1月上旬)から 2.5ヶ月で全 12戸満室。完工(2022年 3月)前後で大半が成約し、残 1戸は AD(広告料)を 2ヶ月分に引き上げてピンポイントで早期消化。満室化のドライバーは家賃の総下げではなく、「どこに・どれだけ・いつ薬を効かせるか」の構造判断です。
1.6倍家賃を成立させるための仲介会社との関係設計とは?
都心ターミナル駅エリアの賃貸仲介会社に対し、NOCOSから継続的にリーシング活動を行い、「ここに連れて行けば決まる」「次の物件の優先紹介が回ってくる」 関係を意図的に構築しました。1棟 12戸まとめてリブランドすることで、仲介会社にとって「お客様を連れて行く意味のある物件」となり、相場を超える家賃でも紹介の優先度が上がります。
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